ギャンブル依存症特有の「脳の飢え」~脳内で働く脳内物質の役割~

アドレナリン、ドーパミン、セロトニン・・・

私たちの感情や気分、はたまた行動にまでも直接影響する脳内物質、あなたはいくつ知っているでしょうか?
名前は聞いたことがあっても、どういった働きをするのかまでは知らないという人は多いのではないでしょうか。

私たちの『脳』はまだ未知な部分が多く、ほとんどは解明されていません。
しかし、基本的なことを知っておくことで実生活に役立つことはたくさんあります。心身ともに健康であるために、コンディションを整えるために脳の秘密について知っていきましょう。

また、ギャンブル依存症になる人はどういった脳の働きをしているのでしょうか?

脳が変形してしまうという「依存症」のメカニズムも掘り下げていきます。

【まとめ】すべては脳次第。パチンコ依存症がもたらす脳への影響4選

パチンコ依存症(ギャンブル依存症)の症状と特徴を3段階で解説

あなたの脳は、「飢え」を感じていませんか?

 

◆『脳』の神秘

脳には約1000億個以上の神経細胞があるといわれています。それらの神経細胞同士が情報交換を円滑に進めるため、神経伝達物質が存在します。これがアドレナリン・ドーパミン・セロトニンなどのよく耳にするホルモンです。このホルモンはストレスや意欲に関係するもので、それぞれの役割が異なります。
アドレナリンは危険やストレスに対して最善の行動をしようと働くホルモンです。
ドーパミンはやる気や快感を感じると生じるホルモン、セロトニンは幸せや癒しを感じたときに働くホルモンです。

基本的な脳内物質 性質
ノルアドレナリン 注意、集中、怒り、おびえ
セロトニン 幸せ、癒し、愛、満足
ドーパミン 快感、やるき
βエンドルフィン ほっとする、落ち着く
GABA 我慢、切り替え、抑制

例を挙げると、エンドルフィン類はモルヒネと同じような働きをする脳内物質です。「脳内麻薬様物質」と呼ばれていて、「麻薬」というと怖いイメージを持つ方もいますがそうではありません。
人間が自然に発生させることができる天然物質で、麻薬に比べて分解も早くなにより人間に必要なものです。
なぜ必要かというと、このエンドルフィンは鎮痛効果がある快感をもたらしてくれるのです。

筆者は一時期ランニングにハマっていましたが、それもこのエンドルフィンによるものです。
長時間走り続けると、体が痛みや疲労を感じ始めます。これにより脳内でエンドルフィン類の分泌量が増し、痛みを和らげてくれます。それによって走り続けることが可能になり、これが「快感」や「恍惚感」になるのです。
いわゆる「ランニングハイ」といわれる陶酔状態は、脳内物質により生み出されます、こうした一連の流れは人にまた「走りたい」と思わせます。

これはパチンコなどのギャンブルにもいえることで、パチンコをしているときの脳内物質を調べる調査によると、ギャンブル特有の射幸性だけではないことがわかっているんです。
実は、大当たりすると興奮するという状態だけではなく「ほっとする」「安心する」という快感のβエンドルフィンの分泌量が増加しました。そして、大当たりをピークに心拍数は急速に低下したのです。

これはつまり、大当たりを引くことを予測して興奮し心拍数が上昇し、実際に大当たりを引くことでβエンドルフィンの分泌が増え鎮痛効果で「安堵」を得ているのです。パチンコをする人はこの「良かった」という感覚を求めているのです。ギャンブルをすればするほどハマっていくのはこのためです。

「ドキドキの興奮」よりも「ホッとする安堵感」を求めてハマってしまうんですね。「依存」と「ハマる」のは多少意味合いは違います。しかし、メカニズムとしては同じなのです。
パチンコなどのギャンブルにハマる人、ランニングにハマる人、釣りやゲーム、買い物、恋愛、趣味にハマる人、そして仕事にハマる人も、メカニズムは一緒です。

すべて脳内物質が影響していて、途方もなくホッとしたいのです。

◆脳の癖は遺伝し、環境に左右される

その人の性格を作るのは主に遺伝子、育ち方、環境ホルモンの主に3つです。

順番にみてみると、遺伝子とはその人のもともとの性質です。これは「キレやすさ」や「内向的」「優柔不断」といったその人らしさを持っています。これらはすべて『脳の癖』によってできていて、癖のある遺伝子が関係しています。もちろん人によって遺伝子は違いますが、持っている遺伝子で方向性が定まってきます。

それらを環境や周囲の人によって刺激を受け、持っている遺伝子が活性化してくるのです。脳の癖は約6割が遺伝子なので、家族や親せきにも注目する必要があります。
しかし脳は刺激に敏感で、育ち方や環境ホルモンに影響を受けるため、持っている遺伝子の癖を活かすか殺すかはその人次第なのです。

例えば、「幸せ」や「癒し」の効果があるセロトニンは、幼少期にとても重要な役割を担っています。子供の頃に十分な愛情を受けられないと、このセロトニンを分泌する機能が発達しないまま、「幸せ」や「癒し」を感じにくい大人になります。日本は高度成長期以降、核家族化や地域社会の崩壊が進んだため、子育てに時間をかける家庭が少なく、結果的にセロトニン分泌機能が充分に育たないままの子供が増えたと考えられます。

また、子供の遊び方にも大きな変化がありました。昔は仲間と外で走り回り遊んでいましたが、最近は少子化やテレビゲームの普及によって「内遊び」や「1人遊び」が目立ちます。体を動かすことで「集中力(ノルアドレナリン)」や「やる気(ドーパミン)」の分泌が増すので、運動は脳の発達に不可欠なのです。また、大勢で遊ぶことによって培われるコミュニケーション能力や人間関係のストレスの対処法なども、セロトニンを育てる上で大切なことです。

親から十分な愛情を受けることと、外で友達と遊ぶことは健全な脳の発達に必要なことです。
現代ではこうした「教育」は形を変えてきているため、脳の発達がままならない要因になっているのではと考えられています。

最後に、「環境ホルモン」については、人間が本来持つホルモンによく似た化学物質を表します。これが体内に入ることで知能指数が低下したり、注意力・集中力が低下したり、衝動性・暴力性が上がるなど、特に胎児にはわずか少量であっても大きな影響を与えます。

この環境ホルモンがADHD(注意欠陥・多動性症候群)などの原因だとする学者もいます。実際に、アメリカの子供の約5%がADHDで、いまなお増えているという調査結果もあります。日本でもキレる子供が増えていることや、学級崩壊はこうした要因があるのではといわれているのです。

このように、脳の発達には幼少期が非常に大切です。主な要因は3つですが、様々な背景に影響されることもわかっています。そして、脳は日々変化し続けます。

◆脳は常に変化する

脳が形成されるのは上記で紹介した、遺伝子、育ち、環境ホルモンに大きな影響を受けているとしても、それで諦めるのは違います。

というのも、脳はその段階で止まることなく常に変化し続けるのです。
足りないものは補い、新たな刺激や発想を求めれば脳はいくらでも変形します。極端にいうと、「脳は変化する」という事実を知っただけで脳にとってはスゴイ変化なのです。新しい知識やこれまでになかった思考や行動は、どこまでも脳を変化させていきます。

現段階でいえることは、現状を受け止めることの大切さと、良い方向に考える思考力や常に変化を求める行動力など、様々な要因があなたの脳を作っています。依存症になりやすい人、なりにくい人は確かにいますが、その原因を知るだけでなくそこからさらなる進化を求め成長し続けることが、我々人間には必要なことなのです。

脳の不思議や生命の不思議について思いを巡らせながら、あなたの「いま」を考えてみてはいかがでしょうか。

ギャンブル依存症になった原因がわかるかもしれません。